「東京都・足立16中人権侵害事件」とその後

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zoom RSS 三都議VS増田教員 準備書面8

<<   作成日時 : 2007/10/19 15:53   >>

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4 プライバシーと公的な事柄に関する個人情報の峻別について
  原告は、個人情報につきプライバシー情報と公的な事柄に関する情報を峻別することを否定し、個人情報であれば、いかなる情報であっても、誰であっても、いかなる目的であっても、本人の承諾に基づかない開示は、プライバシー侵害として不法行為を構成すると主張するようである。
  確かに、プライバシー権の内容については、原告が主張する情報プライバシー権説も含めて諸説あるが、いずれもプライバシー保護によって守られるべき法的利益は私生活上の平穏であることには異論がなく、判例・学説状況を踏まえると、一般的に「他人に知られたくない私生活上の事実又は情報をみだりに公開されないこと利益又は権利」と解される(最高裁判例解説の調査官の見解。乙61の61頁、乙62の489頁参照)。
  そしてその要件としても、➀個人の私生活上の事実又は情報で周知のものでないこと、➁一般人を基準として、他人に知られることで私生活(私生活における心の)平穏を害するような情報であることが必要であると解され(乙62の489頁)、判例・学説もほぼ同様であり、およそ公的な事柄に関する個人情報もプライバシー情報に該当するという原告の主張に与する学説は見当たらない。 
   また、東京都情報公開条例7条1項2号に表れているように東京都の個人情報の取扱いに関する基本的姿勢についても、「公務員の職務遂行に関する情報」については、それが個人情報であっても、公開が予定されているのである(乙67条)。「公務員の職務に関する情報」が個人情報の保護を理由に秘匿されるなら、およそ行政の民主的監視などは行なえなくなるからである。
  本件書籍に掲載された本件各個人情報は、いずれも公務員である原告の「職務遂行に関する情報」であり、プライバシー情報として保護されるものではなく、公開が予定されてしかるべき情報であった。

5 プライバシー保護と表現の自由との調整原理について
  プライバシー保護と表現の自由とが対立する局面における両者の調整原理については、等価的比較考量論が通説であり、最高裁平成15年3月14日判決でも採用されたと解されている(乙61の160頁参照)。
原告の主張は、いかなる場合でも本人の承諾がない限り、プライバシー保護が、表現の自由に優越するかのごとくであるが、かかる見解を主張する判例・学説は見当たらず、原告独自の見解である。
前述のように個人情報保護法もまた、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」(同法1条)ことを目的としており、報道や政治活動(それに付随する行為も含む)に供する目的で開示する行為を規制から外すなどの配慮を規定し、表現の自由及び政治活動の自由を尊重している(乙68)。
表現の自由とプライバシー保護とを比較衡量する場合には、推定的承諾、受忍限度、公益の優越といった点をプライバシーの性格(秘匿要請の強弱、私事性の強弱)等を考慮して行なうべきものとされている(乙62の490頁参照)。

6 個人情報保護条例違反が争われた高裁判決と地裁判決について
  原告の個人情報の被告ら都議に対する提供・開示が東京都個人情報保護条例に違反するかが争われた事件に対する平成19年2月14日判決(甲42)も、個人情報の全てがプライバシー情報にあたるとはせず、本件各個人情報のうち「➀原告の氏名、所属、職名及び公務分掌、➁原告が本件中学校の保護者に対して本件郵送文書を送付したこと、➂これを非違行為として原告に対し第2処分がなされたこと、及び➃第2処分の後、原告に対し研修命令が発せられたことに関しては、本件情報提供前に足立区議会予算委員会、都議会文教委員会において原告の実名を明かにした上で質疑応答が行なわれ、さらに、産経新聞で原告の実名を明かにした上で報道され、逐次一般の知るところとなっていたし、教育を通じて国民全体に奉仕する責任と職務を有する教育公務員の公務遂行に関する社会的な事実として、公共の利害にかかわり、この問題について様々な立場や視点から批判検討が行なわれてしかるべきものであって、本件情報提供のうちこれらの情報の開示については原告のプライバシー侵害には該当しないというべきである」としている(甲42の15頁以下)。
  もっとも、同高裁判決は、➀服務事故報告書(乙7、甲1の157頁参照)中の原告の住所、生年月日・年齢及び教職年数のほか、原告の私生活に関わる情報(「関与する民事裁判の公判」「息子に依頼して投函」)や原告の名誉に関わる情報(「自分の行為について、全面的に正当化しようとする意図で書かれ」「教員として不適切な行為を繰り返す同教諭に対して、厳正な措置をお願いする」)、➁処分説明書(乙4、甲1の166頁)中の原告の生年月日、➂研修状況報告書(甲1の174頁以下参照)中の原告に対する指導行為の具体的内容や原告の疾病に関する情報は、「原告の私生活上の事実であったり、職務行為に関連するものであっても、原告の社会的評価に直接関わる個人情報」であること等を理由にプライバシーに関わる情報として法的保護の対象となるとした。
  思うに、同高裁判決が「職務行為に関連するものであっても原告の社会的評価に直接関わる個人情報」とした情報の開示については、東京都はともかく、被告らによる本件書籍の出版による公開との関係でいえば、名誉毀損に関する不法行為のルールに則って検討すれば足りることであって、本件において敢えてプライバシー情報に含んで別途の基準で検討すべきものではない。
  同高裁判決の原審である東京地裁平成18年6月28日判決(乙63)は、プライバシー情報を同高裁判決よりも狭く解し(名誉毀損情報をプライバシー情報に含まないなど)、服務事故報告書、処分説明書、発令通知書の記載は、いずれも公務員である原告の職務行為に密接に関連した服務上の事実、事故ないし処分に関する事実というべきであるとして、私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそのある情報とはいい難く、一般の人に知られていない情報とはいうことができないとして、その開示はプライバシー侵害にあたらないとした。

7 本件書籍の出版によるプライバシー侵害について
上記両判決については、名誉毀損情報をプライバシー情報に含めなかった地裁判決が妥当であると思料するが、高裁判決が、プライバシー情報だとした服務事故報告書中の私生活に関する情報としたもの、研修状況報告書中の私生活に関する原告の疾病情報については、本件書籍には、掲載されていない。
高裁判決がプライバシー情報としたもののなかで、本件書籍に掲載されたものは、@「処分説明書」中の生年月日(甲1の166頁)と研修状況報告書(乙7)のA「職務に関連するものであっても、原告の社会的評価に直結する個人情報」(甲1の174頁)だけである。
  思うに、@「処分説明書」中の生年月日(本件第2情報に該当する)は、産経新聞の記事で年齢が公表されていることからみても、秘匿の必要が高いものではなく、地裁判決では、プライバシー情報とは認められておらず、原告の不当な行為を公表して教育行政の驚くべき実態と歪みを正すという正当な目的でなされた本件書籍の出版による公益との比較において違法評価を受けるものではない。
またAの「職務に関連するものであっても、原告の社会的評価に直結する個人情報」(本件第3情報、第4情報に該当する)については、通常の名誉毀損不法行為のルールに則り、その真実性が証明されれば、違法性を阻却するものと解すべきであり、実際、それは全て真実であることは、明白であり、原告も争っていない。
  よって、本件書籍に掲載された本件各個人情報の開示によってプライバシー侵害の不法行為が成立することはない。

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天網恢恢疎にして漏らさず。 老子
天網恢恢疎にして漏らさず。 老子の言われた言葉が あまりにも現代社会にマッチしているので、ブログにアップしました。よろしければご訪問ください。 ...続きを見る
書き留めておいた素晴らしい言葉
2007/11/20 10:19

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
高裁で全面勝訴との情報に接しました。
誠におめでとうございます。
とおりすがり
2008/04/17 20:24

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